自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

ハンガリア舞曲第5番【P003】

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真駒内小学校の六年生だった時、学芸会で音楽合奏をすることになった。担任の教師のたっての希望だった。そのときに演奏したのが、ブラームス作曲の『ハンガリア舞曲第5番』である。実を言えば、このほか当時大ヒットを連発していたピンクレディの『サウスポー』、『宇宙戦艦ヤマトOP』の3曲をやったのだが、俺はミーちゃんもケイちゃんも苦手で、竹下景子にぞっこんだった。

子供というものは残酷だ。誰がどの楽器を担当するか。結局、我の強いものが目立ったパートを独占していくようになっている。俺は特別内気ではなかったけれど、こういったとき、自主的に手を上げられる性格ではなく(いまもそうだ)、結局は本に書いたように、その他大勢のパートであるピアニカ(メロディオン)を担当した。

担任はずいぶん楽しそうだったが、正直、嫌で嫌でたまらなかった。なにしろ他の児童の引き立て役をやらされるのだ。楽しいわけがあるまい。一部の児童と盛り上がる教師をみて、なんて他人の心が分からないヤツなんだと根に持っていた。その恨みは、教師の結婚が決まり、自宅に遊びに行った際、挨拶をしてきた婚約者の女性に向けられた。

「先生は、あまりめんくいではないんですね」

自分に彼女ができたとき、子供とはいえ最低の復讐をしたことに気がつき、というより、無関係の人に八つ当たりをしただけと理解し、自己嫌悪に陥った。返す返すも俺は担任と同程度最低で、他人を思い遣れる子供ではなかった。

奥さん、本当にごめんなさい。反省しています。もう40年も前のことで、あなたが元気かもわからないけれど。