自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

佐々涼子さんの新刊『夜明けを待つ』

担当編集の方から送って戴きました。ありがとうございます。めくったら止まらず、最後まで読みました。面白い本を読んだら衝動が湧き誰かに伝えたくなる。一気に感想を書き上げたら、長くなったのでブログにも載せます。SNSには読者からの感想が溢れると思い…

『ヤクザときどきピアノ』難読部分解説動画、および解説

youtube.com 音楽を文章で表現するのはむつかしい。やってみせれば一目瞭然なのに、それを文字で解説すると、文章力がない上に、普段、やっていない分野なのでとっちらかる。『ヤクザときどきピアノ』にもずっとわかりにくいと気になっていた記述があります…

我が家のお隣さんは、ピアノ教室に水産庁【024p】

団地住まいだった俺の夢は、一軒家だった。マンションは暴力団の嫌がらせに対処しやすいのだが、どうしても戸建てがよく、30才の時、建売住宅を買った。70坪程度の敷地を持つ古い家が売却され、更地にして三軒分に分割し、スペースを最大限に生かして分譲住…

ピアニストの文学者、ヴァレリー・アフェナシェフ【005p】

youtu.be ヤクザのことはいきなり書ける。俺の中には25年分の蓄積が澱のように溜まっている。それらをすくいあげ、味付けすれば、ヤクザのあらゆる面を描写できるはずだ。ただし、ヤクザというドアを使って他の分野をのぞいた時……それは前々作である『サカナ…

ハンガリア舞曲第5番【P003】

youtu.be 真駒内小学校の六年生だった時、学芸会で音楽合奏をすることになった。担任の教師のたっての希望だった。そのときに演奏したのが、ブラームス作曲の『ハンガリア舞曲第5番』である。実を言えば、このほか当時大ヒットを連発していたピンクレディの…

教会と日曜学校【P003】

俺が育った道営住宅Bー8団地 小学校から高校を卒業するまで、札幌市南区真駒内上町二丁目の道営住宅で育った。 上町は富裕層と低所得者層が混在する特殊な町だ。 中学の深田という社会の教師は、「ここは札幌で唯一のスラム街だ」とよく嘲笑っていた。歴史のな…

台湾の、いわゆる日本でいう水産庁

台湾取材の際、いちおう当てにいきました。通訳はあっちが用意してくれるということだった。俺としては「台湾がシラスを輸出禁止にしたのは、シラスを売ってくれない日本への報復」と言って欲しいわけですが、役人さんに、いきなり、正面から質問をぶつけても…

種子島のウナギ露地池

路地池の水をポンプで抜いていくと、大方のウナギは水と一緒に吸い込まれるんですが、なかなか一網打尽にはできず、最後まで泥の中をウナギたちが這い回ります。それを写真のような箒に似た竹製の道具で、ポン歩の吸込み口まで追い込んでいくんだけど、けっ…

初版の誤植。正誤表について

なんども確かめたつもりだったのですが、現在、初版にこれだけの誤記を発見し、二刷以降、訂正しております。申し訳ありません。 ●P6 クレジット 古賀太郎→古賀大郎 ●P9 10行目 千葉県夷隅郡大原町→千葉県夷隅郡大原町(現・いすみ市) ●P119 8行目 トドとか…

香港の立て場

水産業でいう”立て場”には複数の意味があり、この場合、シラスを一時的に泳がせておく水槽を意味している。立て場訪問することがなぜ「すごいスクープ」(NHKの記者に言われた)になるのか、業界誌の記者から「東京湾に浮かびますよ」と脅されるのか、最初はなか…

花咲港のイカ釣り船

いまのイカ釣り船は、イカをおびき寄せるためのライトがLEDになっていて、ずいぶん雰囲気が変わってしまった。根室の章に、この街が賑やかだった頃、全国から根室にやってきたイカ釣りの船を係留する場所がなく、5隻、6隻数珠つなぎにしていたという証言を載…

密漁団車両の特別装備

密漁団の使うハイエースなどのワンボックス車や、陸周りの車には特別なスイッチが後付けされている。これをオフにすると、インパネ照明、ブレーキランプ、バックライトが消える。密漁団にとって、海産物の積み込みは現行犯逮捕されれば言い逃れできない魔の…

ホクレンフラッグと間違えて、ロシア人に出した旗

『サカナとヤクザ』に出てくる旗、まさにそれだけの写真ですw 相手が日本語分かんないでよかったw

やっとまともな取材ができた漁協の関係者

ひやま漁協の元組合長である市山亮悦さん 市山さんは北海道の漁協関係者じゃ有名人だったので、インタビューには応じてもらえないかと思っていた。連絡先を調べ、電話を入れ、これまで何度も漁協に取材を申し込んだが断られたことも話したら、「そりゃそうだ…

ターレーを自家用にしたい人、俺の他にもいるだろう。

ターレーってのは、ターレットトラックという意味で、戦車の砲塔のように駆動部(前輪部分)がグルグル回転するからです。なのでものすごく小回りがきき、狭い冷凍庫の中でも方向転換が出来きます。 築地にはまだガソリンターレーも残っていて、大坂では地元…

ぜひとも北方領土を見に行って欲しい。

北方領土までの距離がすっごく近い、視察に来た政治家や役人が「こんなに近いとは思わなかった」と漏らし、地元をがっかりさせてることは、『サカナとヤクザ』でもけっこう書きました。そういった嘆息はいろんな本に書かれており、本書では沢木耕太郎の著作を…

押収された密漁団の道具はすべてが当人に買い戻される。

テレビでナマコ密漁団の使う独特な道具をみたことがある方もいると思います。海上で一切、ライトを使わない彼らは、台所用のザルに防水ライトを結束バンドでくくりつけている。かっこわるいが安いし使い勝手がいいそうです。 現行犯逮捕はブツ(密漁した海産…

どうしてあれほど、ロシア人に直当てしたかったのか。

ハーレーがロシア人相手のコミュニケーションに役立つとは思わなかった。 当時、日本に入ってくるロシアの船が、ほぼ確実にカニの密漁船であることは掴んでいた。カニの業者から、本国でばれると大変なのでインタビューには応じるはずないと忠告されていた。…

陸に上がった北海の大統領がオープンしたキャバレー。

根室市梅ヶ枝町にある”村さ来”の場所に、かつて北海の大統領と呼ばれた石本登がオープンさせたキャバレー南千島があった。全道からホステスを引き抜き、前借り金や引っ越し費用も石本が負担して約50人を揃え、昭和43年(1968年)にオープンしたマンモスキャ…

軽トラで根室まで走って、最後のレポ船主を直撃した理由

「島を返せ」ってすごくないですか。北海道でも根室だけです。街中のあちこちに「北方領土を返せ」というスローガンが貼ってあるのは。『サカナとヤクザ』に出てくる田中勇一さん…最後のレポ船主なんですけど、もう島がかえってくるとは思ってない、と言って…

飯岡組VS.笹川一家の対立抗争事件

平手造酒の殺害現場は、ちょうど墓地の中にある。 と、ヤクザ記事風に書けばそうなる。講談『天保水滸伝』では、大利根川原の決闘と呼ばれてます。双方が喧嘩支度をして、人気のない場所に集まって、無関係の市民が巻き添えにならないよう殺し合うってのは、…

漁協の取材に密漁団がついてきた。

北海道では、噴火湾のナマコは枯れないんだそうです。生物学的に裏が取れなかったので本には書かなかったけど、密漁団はそう言う。だからまず最初は噴火湾の漁協に取材を申し込んだ。実をいうと、このエリアの漁協は排他的で、気が荒いと言われてます。密漁…

ダイバーがナマコを入れる玉ねぎ袋

北海道檜山郡上ノ国漁協で撮影 ナマコ漁は、桁引きと潜水の二種類があります。前者は船の上からどでかい鋼鉄製の熊手を落とし、それを引っ張って海底をさらう漁法です。岩礁地帯ではできません。そうした場所では潜水で獲ります。漁協が潜水部会を作るか、プ…

黒いあまちゃんとの再会

黒いあまちゃんとは5年後に再会しました。俺は最初の出会いの時、彼女のことを週刊誌に書かせてもらった。『サカナとヤクザ』には再会時のエピソードも載っている。でも、ほんといえば、書かなかった部分がある。俺は彼女をもう一度呼び出しているんです。 …

花咲港のロシア船

色目が暗くてすぐ分かります。不審船団の趣です。写真撮ると揉めると脅されたので、望遠レンズで撮影してるw 根室はあちこちにロシア語の看板があるんですが、花咲港にもあります。

根室市の防災無線

www.youtube.com 第五章に出てくる大津美子の『ここに幸あり』です。昭和31年5月のヒット曲です。作曲をした飯田三郎が根室の人なので、故郷の防災無線に採用されたということらしい。ぶっちゃけ、女は男に愛を捧げて生きるればOK的なクソみたいな歌詞なので…

玄関先に羆の剥製があって、シャワーが出ないのに1万円だったホテル。

第五章に出てくるホテルです。空調はいさぎよく温風スイッチのみ。ま、根室の気温だと全然問題はないんだけど。 あと、この話は書かなかったんですが、ジャティック事件で米兵を隠したり、特攻船の陸周り(暴力団側の見張り)がたむろしていた玉屋旅館ってあ…

根室・特攻船のシルエット

別のエントリーにも書いたが、俺は乗り物やカメラの描写がやたら多く、詳細になります。特攻船に関しては、遠慮なく自分の趣味を発揮して取材・検証しました。最高速度や改造方法、操縦のテクニックなど、詳細に聞き書きした。他の書き手なら無視するような…

築地の魚河岸のナンバーワン食堂

そりゃあ吉野屋の1号店でしょう。異存あるまい。狂牛病騒ぎの中でも牛丼の提供をやめなかったらしい。銚子市に観光行って肉を食う逆張りはイラッとくるんですけど、魚河岸で肉を食うのは、ここで働いてる人間のチョイスに乗っかってみるという雰囲気があって…

釧路から根室に向かう途中、思わずバイクを止めた場所。

釧路から根室まで、もう何往復したかわかりません。走るたびに綺麗で北海道らしい風景と感じる。根室では見たこともない野鳥がこうした風景をバックに飛んでるだけではなく、ごみステーションで生ゴミを漁っておりますw ものすごくシュールな光景です。 倦…