自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

漁協の取材に密漁団がついてきた。

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北海道では、噴火湾のナマコは枯れないんだそうです。生物学的に裏が取れなかったので本には書かなかったけど、密漁団はそう言う。だからまず最初は噴火湾の漁協に取材を申し込んだ。実をいうと、このエリアの漁協は排他的で、気が荒いと言われてます。密漁団を追い回し、陸に上がった彼らをぼこぼこにしてしまったりする。これ、なかなか事件化しないんですよ。まだこんなのはいいほうで、船で追いかけ、引いたりするんです。プロペラに当たったらばらばら死体です。

『サカナとヤクザ』の中にも、ブログの他の記事にも、漁協の取材が大変だっと書きました。冒頭に書いたように、まずは噴火湾沿いに取材申し込みをしまして、全滅だったので函館まで下がり、ようやく、ひやま漁業協同組合 上ノ国支所の元組合長さんがOKしてくれた。

 

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タンクはXT250Tのものですが、TW200です。

取材当日、函館一帯は雨でした。俺、この時はバイクで取材してたんです。こんなふうに記念写真撮りながら。いやまいった。雨かーと思ってたら、馴染みの密漁団から電話がありまして、気が緩んでたので今日は漁協の取材があるとべらべら喋っちゃった。すると「じゃあ送ってってやる」という。待て。待ってくれ。漁協の取材に密漁団と一緒には行けない。

「俺、近くの温泉で時間潰してから心配すんなや」

 しかし、現場に着くと立て場を見に行こうとする。信じた俺が甘かった。必死に制止しました。ところが漁協の人が「一緒にどうぞ」って言うんです。そののち、密漁団が上ノ国のナマコを密漁したらしゃれになりません。

結局、関係者には全部正直に伝えました。車の運転手の素性も、魂胆も。平謝りするしかなかった。

「なんか変わった人だと思ったんだよ」

上ノ国の海には監視カメラがばっちりあるので、密漁の心配はないそうです。マジで焦った。