自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

根室に残る密漁の残滓

 

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密漁で栄えた根室には、全国から有名な店のコックが集められました。そしてたくさんのオリジナル料理を考案した。それだけ街が賑やかだったわけです。『サカナとヤクザ』で、もっとも取材と執筆に時間をかけたのが根室の密漁です。関係者に直接話を聞けるのはたぶん最後だと感じた。その後、俺が死んだ後もこの時期の根室は何度も記事になるはず。おおげさにいえば100年後の同業者のために、先輩たちが書いた膨大なレポ船・特攻船記事の総括のつもりで書いたんです。

第五章の冒頭に出てくるエスカロップ、この写真のものは有名店・どりあんのものです。根室のあちこちで食えます。タケノコ入りバターライスに薄いカツレツ、ドミグラスソースというレシピです。道内では給食に出たり、コンビニのメニューになったりしました。

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ドリアンにはエスカロップの解説もあります。

 

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同じくドリアンのオリエンタルライスは、ドライカレーの上に牛下がり肉(内地でいうハラミ)を載せ、ステーキソースがかかってます。これをまずいという人は舌がおかしい。だって美味くなる要素しかない。

 

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ニューかおりのスタミナライスは、ご飯の上にトンカツ、さらに野菜炒めをのっけて目玉焼きというパワフルさですが、案外、あっさりしてておっさんでも食べられます。こうした料理は漁師が手早く、おいしく、腹一杯になるよう考案されたもので、これだけオリジナルの洋食が根付いているのは北海道でも根室だけです。

根室を訪問したら、根室華まるの本店行って回転寿司食って、あとはあちこちでオリジナル洋食をぜひ食して欲しい。エピソードごと人に話したくなる味です。