鈴木智彦著『サカナとヤクザ』補稿

新刊の資料、補足、写真、こぼれ話。

ネダリ浜

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ネダリ浜は正式名を弁天漁港という。俺が初めて取材したアワビの大量密漁事件は、この港で待ち伏せしていた海保職員が、北海道から遠征してきた密漁チームを現行犯逮捕したものだった。

「現場を見たいんですか?分かんないんじゃないかな。譜代漁協に行けば教えてくれます。人気のない、急な道を降りていくと、漁港は漁港だけど、え?こんなとこに港の設備があるのかっていう場所があるんです。港の設備はある。いちおう岸壁があって。コンクリートで防波堤作って」(海保職員)

説明を聞いても、頭に絵が浮かばない。そんな場所は俺の認識する世界には存在しない。釜石から海沿いをバイクで走るのだが、なかなか到着しなかった。たしか4時間くらいかかった記憶がある。到着した時はもう真っ暗だったけど、浜に降りる側道がハーレーでは無理な急坂であることは分かった。結局、懐中電灯を手に徒歩で降りた。

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今年、北海道からの帰路、5年ぶりにネダリ浜に出かけてみたところ、煌々と常夜灯が点いており、新しい施設も出来ていた。震災直後は真っ暗で、岸にあったコンクリート製の建物は窓もドアも破壊されており、暗闇の中から波の音だけが聞こえてきた。

俺は幽霊云々を一切信じていないが、それでもかなり不気味である。密漁団はこの真っ暗な海にアキレスのゴムボートで漕ぎ出し、ライトを点けずに漆黒の中へとダイビングする。

 

漁業という日本の問題

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日本の魚は大丈夫か 漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書)

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