自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

海上保安部と漁協

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密漁は海の犯罪だから、どうしても海上保安庁に取材しなくてはならない。実際は警察も密漁を取り締まれるんだけど、海のプロの話が最も詳細、かつ面白い。ところが海保に正面から取材を申し込むと、まぁ役所はどこもそうだけど、取り締まりの現場を全然知らない背広組がぞろぞろ出てきて、質問しても通り一遍の返答しかない。WEDGEでウナギの取材をしていた時、編集部のKさんが鹿児島にある第十管区に取材申し込みをしてくれたんだけど、ものすごい横柄にあしらわれたらしい。あまりにひどいんでチラッとあれこれアピールをしたところ、突然態度を変えたんだそう。「今までの取材で一番むかつきました」と怒ってたけど、それだけ苦労して真正面から取材しても、ほとんど成果は得られない。

現場で密漁取り締まりをしている職員たちの話はネタの宝庫だ。彼らは体で密漁を知っている。でもそんなプロと知り合う機会もないし、よしんば出会っても短時間でなかなかぶっちゃけ話をしてくれるほど懐深くまで飛び込めない。しかし、それよりもっと時間がかかり、苦労する取材がある。漁協だ。

漁協はいわば犯罪の被害者である。暴力団に定着性の海産物を密漁され、悔しい思いをしてるはずなのに、そう簡単には取材に応じてくれない。こっちがバックを持たないフリーライターだからかもしれない。しかし、この5年、あまりに漁協から断られすぎて、なにか他に理由があるのではないかと思うようになった。

とあるアワビの密漁事件を担当した海保の職員に、なんとかオフレコで話を聞いてあてをつけ、

「漁協……ここらへんだと宮古が大きい。あそこには岩手県漁連会長がいますから。大井さんっていうんだけど、元気のいいおじいさんで、全漁連の副会長でもある。(アワビ密漁の取り締まりのニュースを聞いて)たいへん喜んでたそうです」

と言われたから、よし、宮古ならOKしてくれると思い、正面から取材申し込みをするんだけど、やっぱり断られる。よほど海保の人に紹介されたんです、と言いそうになるんだけど、オフレコなのでそれは言えない。

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宮古漁業協同組合:組合概要

 

ああ、そういうことか……と事情が分かってきたのはつい去年あたり。探られたくない事情があるのだ。それからは評判の悪い漁協を狙って取材申し込みを続けてきた。当然、連敗記録を更新中である。こっちも意地になっている。意味ないんだけどもw