自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

サカナとヤクザ

大物は築地の華である

記事のタイトルは、正延哲士の小説『伝説のやくざ・ボンノ』の有名な一節、「ボンノは、男の華である」オマージュです。実際、そう表現しても異存はなかろう。大物って言うのはマグロです。大きいからだと思います。知らんけど。第二章に、年末、俺が大物の…

密漁アワビと訴訟対策

築地市場で密漁アワビを売ってるかどうか確かめる!ってことでバイトを始めたんですけど、実を言うとすぐ分かったんですよ。あ、黒だなって。ぬるいんで。ただし、告発したいわけじゃない。動かぬ証拠を掴んで、糾弾したいわけじゃないんです。なので、途中…

築地市場の落書き

築地市場にはあちこちに「煙草を吸うな」「落書き厳禁」という張り紙があるんだけど、誰もがくわえ煙草で、そしてあちこちに落書きがあった。これは勝ちどき門にある駐車場ビルの中央にあるターレー用のエレベーター。4機あるんだけどいつもひとつか2つ壊れ…

落ちないのかなって思いませんか?

落ちるんですw 当然、落ちたよーって声をかけます。冷凍マグロだけではなく、発泡のケースも落ちます。カーブじゃなくても落ちる。高く積み上げた時、崩れないようラップを撒く時があるんですけど、それをしないほうがかっこいい、みたいなところはある。で…

築地魚河岸にある、恋人を連れて行きたい場所

それは冷凍庫です。マイナス18度より低いっす。密室に連れ込んでスケベなことをするわけではないw じゃあどうしてか。すっごくいい匂いがするんですよ。仕切りに使ってる木材と海産物の匂いが入り交じって。芳醇なウイスキーを連想させるような、最高の香り…

鮭のドレスとスーパー・バイトの加藤さん(仮名)。

第二章で出てくる鮭のドレス。ドレスとは魚の頭、エラ、内臓を取り除いたもののこと。この箱の中にドレスが4~6匹分入ってるんだけど、いったん取り出し、電動のこぎりで二枚下ろしにして、再び箱詰めして配送場所に運ぶ。これが午前2時に出社して、最初にや…

著者近影

築地の仲卸でバイトを始めた時、みるものすべてが新鮮で、あっちこっちに「遊びに来て!」と声をかけていた。いや、実際に来られてもバイト風情が提供できる特別サービスはないんだが。ただし、ターレーの後ろには乗ってもらえた。混雑した市場の中、たとえ…

築地市場の暴力団との決別宣言は2つあります。

最初は平成6年だから、たぶん暴対法が施行(平成4年)された直後、利権が欲しい警察が築地に乗り込んできて書かせたものだと思う。 もうひとつは平成24年だから、東京都の暴排条例に合わせて出されたんだろう。事務室の廊下に2つ貼ってある。こんなもん、俺…

魚河岸の仲卸に面接に出かけた朝は雨だった。

写真のExif情報をみると2013年12月19日‏5:56:16とある。面接は6時からだったんだけど、仲卸の跡継ぎが15分以上遅刻してきたので、仕方なく雨の中で待つことになった。しかしすごいよね。携帯で写真撮るだけで、そんなことまで記録され、自分の記憶がありあ…

ネダリ浜

ネダリ浜は正式名を弁天漁港という。俺が初めて取材したアワビの大量密漁事件は、この港で待ち伏せしていた海保職員が、北海道から遠征してきた密漁チームを現行犯逮捕したものだった。 「現場を見たいんですか?分かんないんじゃないかな。譜代漁協に行けば…

海上保安部と漁協

密漁は海の犯罪だから、どうしても海上保安庁に取材しなくてはならない。実際は警察も密漁を取り締まれるんだけど、海のプロの話が最も詳細、かつ面白い。ところが海保に正面から取材を申し込むと、まぁ役所はどこもそうだけど、取り締まりの現場を全然知ら…

原発作業員のハーレー・ダビットソン

(※第一章にあるネダリ浜に国道45号線。地元の軽トラに何度も道を譲った) 俺の悪いクセは、原稿の中にバイクや車やカメラの描写をやたら入れ込むことです。単純な話です。機械が好きだからです。『サカナとヤクザ』の第1稿にも、かなりその手の記述があった…

黒いあまちゃん

正直、なにもかも「黒いあまちゃん」という言葉の引きの強さからでした。当然、密漁の取材は三陸のアワビから始めました。当時はまだあちこちにポスターが貼ってあって、あまちゃんの裏側にあるドロドロを取材するのが少々後ろめたくもあった。いや、嘘はい…

第一章【岩手・宮城 三陸アワビ密漁団 VS 海保の頂上策作戦】の扉写真

実際、『サカナとヤクザ』第一章の扉で使った写真は、ここにあるウニとナマコを隣のテーブルを移動させ、アワビの皿だけを撮った別テイクです。皿に載せられたアワビの刺身……そして担当編集がつけた「アワビの密漁はヤクザのシノギ」というどーでもいいキャ…