自著のための補稿(鈴木智彦)

自著の資料、補足、写真、こぼれ話。

銚子・飯沼観音(圓福寺)のヤクザヲタ的宝物

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東庄にある天保水滸伝の資料館でもコピーをくれる侠客番付のオリジナルがあるんですよ。天保水滸伝の登場人物、銚子の五郎蔵、飯岡助五郎、笹川繁蔵も載ってます。残念ながら少し滲んでいるんだけど、本物をみたのは初めてです。赤い縁取りがしてあるのも知らなかった。

公開してないので見せてくれるかわからないけど、住職さんはめっちゃ優しいので、縁があればチャンスがあるかと。

blog.goo.ne.jp

 

 

天保水滸伝 (中公文庫)

天保水滸伝 (中公文庫)

 
天保桃色水滸伝 1 (SPコミックス)

天保桃色水滸伝 1 (SPコミックス)

 

 

 

 

千葉の喧嘩は銚子から始まる。銚子の喧嘩は飯沼観音から始まる。

戦後、高寅が熱心に寄進した銚子市の圓福寺は別名・飯沼観音という。戦後、一帯は銚子で最も賑わった繁華街だった。圓福寺は国道244号線を挟んで2つあり、おそらく観音前交差点近く、海側の五重塔があるあたりが、怪しげな店が建ち並んだエリア、言い替えればヤクザの巣窟だった場所と推測している。ただ、あまりに寂れすぎて、どのあたりがジャズ・ミュージシャンの菊地成孔のいう「浅草の周りに新宿と赤坂がくっついているような」繁華街だったのか判然としない。青線街だった田中町一帯も同様に寂れているが、まだこちらのほうが昔の怪しげな雰囲気を感じやすい。

www.web-across.com

 

もうひとつの圓福寺に、天保水滸伝の悪役である飯沼助五郎、その親分である銚子の五郎蔵(木村勝五郎)が寄進した釜、そして五郎蔵の墓がある。

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釜は圓福寺の社務所に併設された宝物殿にある。

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墓には案内の札が建てられているが、分からなければ社務所で教えてもらえる。

このあたりの話は、天保水滸伝を知らないとさっぱりわからないので、せめてYouTubeに上がっている何篇か聴いてから出かけて下さい。逆に言えば、天保水滸伝に興味がある人にとって、銚子旅行は聖地巡りです。

途方もない数の遭難者、その象徴としての千人

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千人塚海難漁民慰霊塔:千葉県銚子市川口町2丁目6426−3

第四章に出てくる千人塚。高寅の時代の慰霊碑もある。漁師たちの生活が刹那的だったのは、危険な仕事だったからでもあるだろう。今でも地元の人が花を手向けている。

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昭和三十五年に建立された慰霊塔には、すべての側面に犠牲者の名前が刻まれ、以下の碑文がある。

 

五月雨や

幾千漁士の

眠る丘

 

www.sankei.com

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銚子の川口が海の三大難所とひとつと呼ばれていた時代は、もはや過去のものなのかもしれない。新航路のおかげで海難事故は激減した。

築地と豊洲に関する議論って、根本的にずれてないすかね?

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たとえ4ヶ月でも、たとえバイトでも、魚河岸で働くと豊洲への移転について、ひとこと言いたくなるんだけど……仲卸の家賃安すぎるでしょ。具体的にいくらか書籍にもここにも書かないけど。

 


「築地移転問題 そもそも中央卸売市場が必要なのか」アジア成長研究所 小松正之氏

 

市場の問題に関しては、小松さんの言うとおりと思う。世間ではこっち方面が全然話題にならんので、築地・豊洲問題が賑やかになっても、議論の中に入っていけなかったです。小松さんは水産庁の時代に、世界を相手に鯨の問題でやりあった人です。ぜんぜん関係ないですが、うちのお隣さんも水産庁の人ですw

 

 

会社の重役とどうやってサシ飲みするか。

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会社っていっても仲卸です。重役といってもアワビを扱っている魚屋さんです。いや、でもすっごい年商で、経営に噛んでる血族それぞれウン千万くらいの年収がある。社長の跡取り(甥っ子)は魚河岸を見下ろせるタワマン住んでるし。

ま、それはともかく、俺は軽子という配送人としてバイトになりまして、アワビのあれこれを知ってる重役と接点がない。飲みに誘うにしても口実がない。っつーか、仕事終わるの昼だし。こっちはバイク、あっちは車で、そのへんで飲んでいこうってなりません。

ところが、この仲卸が寿司屋をやることになり、メニューの写真を撮ってくれと頼まれた。俺、こういうときの運だけはいいw ギャラの話になって、「重役とサシで飲みたいです」と伝えた。冷静に考えれば相当おかしいと思うんだけど怪しまれなかった。

そこであれこれ話を聞いて、他の仲卸で密漁アワビを売ってることは掴んでたし、あれこれきいていたので、4月にバイトを辞めました。人生で初めての円満退社だったです。魚河岸で体を使う仕事をして、あとは思索に耽る……ホッファーみたいでかっこいいよね。そんな人もいたのかも。

  

 

魚河岸とヤクザ

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魚河岸のとヤクザがどれほど深い仲だったのかは、昭和の映画を観るとよくわかります。この美空ひばりの主演作は今風にいえばアイドル映画だろうけど、日本侠客伝関東編は、魚河岸を舞台にしたガチのヤクザ映画です。魚河岸にヤクザがいても、誰一人驚かなかった。それは当たり前のことだった。

 

脚本は笠原和夫です。一回自分でもDVDを買ったんだけど、生田與克 さんにプレゼントしてしまったので観てません。

魚河岸の親分、佃政こと金子政吉

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佃政初代は、元来、日本橋の親分です。魚河岸が日本橋にあった頃からの縁だったはず。築地には「佃」の字を使った屋号が多いけど(理由はググると死ぬほど出てきます)、ヤクザもそうだったというのは面白いですよね。たぶん、みなさんが思ってる以上に大親分です。魚河岸の関係者が書いた本をみると、ガチで地元、魚河岸、政府関係者から尊敬されていたことが分かる。いまの暴力団とはまったく違う存在だったのだろう。

築地の一角……どえらい場所に関係者の家があるんですけど、表札は三代目の姓になっています。

現在、佃政一家は稲川会傘下で、当代は地元っ子ではないです。

 

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ゆめ日記:鉄砲洲稲荷神社 例大祭

このサイトをみると、2010年はまだ稲川会の法被を着た佃政一家の若い衆が、歌舞伎座にやってきた神輿の警備をしてるんだけど、いまはもう無理だろう。SNSにもヤクザや関係者、それを匂わすアカウントが登場し、他人の誹謗中傷と自分すごいアピールをするケースが多いですけど、あれ、暴力団ネガティブキャンペーンとしては最高だと思います。